特別編 ある日の実フライトのおっかけ

ある日といいながら、調べればいつの話かわかってしまうのですが。

東京から函館に向かい、その足で北海道新幹線を使って本州へとんぼ返りという、阿呆なプランを立てた私。

今回は利用したい時刻最優先で調べた結果、AirDoさんに初めてお世話になることになりました。チケットは予約後即カード決済で購入済み。

当日、ふとメールを見ると、「天候調査」「15分遅延見込み」との速報が。この時点で無手数料払い戻しor振り替え可能なんですね。

あわてず騒がず、ちょいちょいお世話になる「空港の天気」サイトでMETARとTAFをチェック。西からの風で視程が悪そうです。ただTAFによれば天気は回復傾向とのこと。(スクリーンショット撮り忘れました)。

実際のMETARの変化はこのとおり。

metar変遷

天候調査のメールが来たのが12:30ごろ。ちょうどその直前に極端に視程がおちています。ここには書かれていませんが、雲低高度(ceiling=天井。地上から見た雲の底の高度)がかなり低く、確か90m(295ft)程度と報じられていました。

ちょうどフライトシミュレータで遊んでいる方の実況などを見ていて、計器飛行のお勉強中でもあるので調べてみましょう。

風は南西から8m/s。南西といわれても困るのですが、仮に磁方位225度からとしましょう。函館空港(RJCH)のチャートはネットにおちているものを拾ってきました。AIP Japan 刊行ですがたぶんちょっと古いでしょうね。お遊びだからこれでよしとします。

函館空港の ILS は Rwy12 方向にしかついてません。Rwy12 の磁方位は117のようですので、8m/s ≒ 15.6kt これにcos(117度-(225度-180度))≒-0.3 を乗じると 4.7kt くらいの追い風。これなら追い風のリミットには入りそうです。ただ ILS12 アプローチとしても、機材がB767-300なのでカテゴリDですから、DAは309ft、結構ギリギリです。天候調査がついているのはこちらが原因のようです(METARではRVR/CVAは報じられないのでこっちが below minima な可能性もあります)。

もし風が強くなってRwy12には降りれず、Rwy30へサークリングするとなると、MDAは一気に690ft(約210m)まで上がります。一般的には背風成分が10ktくらいが目安といわれますね。風の角度が225度からとしてRwy12に対して10ktになるのは風速約15m/sくらいになるとまずいようです(もちろん風向が変わるとリミットの風速も変わりますが)。

AirDoのカウンターに行くと、すんなりチェックイン手続きが進みました。やはり運航できそうという空気が漂っています。ただ15分delayは微妙に痛いのですが、これは北海道から飛んでくる便の遅延が原因なのでどうにもならない様子。

あきらめて空港内で食事をしてから保安検査場を抜けます。スポットチェンジはないみたいでPBBから乗せてくれるようです。バスだとさらに時間がかかりますからね…。

ちょうど搭乗口前に到着する頃にAirDo塗装のB767が結構な勢いでスポットに入ってきました。ちょっとビックリ。結局もともとの出発時刻くらいに搭乗案内が始まりました。時計は見ていなかったのですが、15分遅れ予測のところが10分程度の遅れに縮まりゲートを離れます。

羽田は南風ということなので、Rwy16L予想でしたがビンゴ。No.2 Dep でしたがそれほど待つわけでもなく、先行機に続いて離陸していきます。途中機長アナウンスでFL370にて巡航とのこと。上昇中も小さな揺れが多めで上に逃げざるを得なかった様子でした。

なにせ雲ばっかりなので様子がよく分からなかったのですが、最後に北海道の海岸線が見えるまでほぼまっすぐ高度を下げて左旋回。ということは、ILS12 circle to 30 は回避できた様子で、客室からも Airport insight。TAF の通りに雲が切れたようです。そのまま一気に Rwy30 に降ります。リバーススラストはアイドルリバースだけで、たぶん限界ギリギリのtaxiスピードでスポットイン。パイロットさんも遅れ回復に懸命の努力をしてくれたことが分かりました。

後工程が押しているため、手荷物は預けず機内持ち込みのリュックだけだったので、急いで制限区域を出て無事に予定のリムジンバスに間に合ったのでした。

さて、このフライトを flightradar24 で見てみました。函館付近の状況はこのとおり。

下北半島上空通過

下北半島の上空を通過し、大間崎のすぐ東側から津軽海峡に出ています。

チャートと見比べてみると、EMINA RNAV アライバル+若干のレーダーベクタであろうことが想像できます。管制も遅れている定期便には可能な範囲でショートカットなどを出してくれている例でもあります。

charts

ちなみに、B767のアビオニクスって今や旧世代に相当するのですが、RNAV1を使ったアプローチってそもそも対応してたのか?と疑問に思い調べてみると、JASMA というサイトで月間にてRNAV1やRNP ARといった GNSS を使った航行が許可されている機材のリストが公開されています。今回の機材はRNAV5 と RNAV1/2 に対応しているとのこと。次世代のアプローチといわれる RNP AR はさすがに対応していませんが、当初は数えるほどしかなかった対応機がかなり増えていることがわかります(他社だとB767でRNP ARの認証を取った機体もあるそうで、追加装備で対応できるようです)。今回のように、ILSが装備されている滑走路だと追い風なんだけど視程も厳しいという気象状況に強いといわれる 0.3nm精度の RNP AR アプローチの今後の整備にも期待がかかります。

なお函館空港にも RNP AR アプローチが設定されていて、RNAV(RNP) Z RWY 30 となっています。

minima for RNAV Z Rwy30

minima だけ見るとそれほど有利ではないですが、もちろん ILS12からサークリングするよりは低いところまで降りれます。RNP AR がおいしいシチュエーションはターミナルレーダーがない場所での進入であり、函館は普段はレーダーがありますから、通常は RNAV1 のアプローチで事足りるのですが、メンテナンスや故障でターミナルレーダーが使えず、しかも視程がいまいちという場合(そういうときに限って、ということだってありえますよね)には効果を発揮するのでしょう。北海道は飛行場管制のない空港(つまりレーダーもない)が多いので、こういう機上設備+αで解決できるアプローチ方法はありがたいかも知れません。

それにしても。RNAV の直線的な進入コースによる距離短縮はなかなかのものです。VOR Rwy30 なんて、いったん空港真上を通過してまた戻ってくる昔ながらのルートですからね。函館ではうまみがすくないですが、背後に山を抱えている空港などはRNP APで必要に応じてアークという形で曲線を組み合わせるとさらに安全で効率的な進入経路が設定できるわけです。

以上、素人の戯言でした。